夫が料理好きで、新しいキッチンで、せっせと料理を作ってくれていました。新築後、私は仕事で忙しく、食事担当が夫になっていたのです。
夫は結構きれい好きで、新築の家の掃除も良くやってくれていました。トイレやお風呂、台所などの掃除も欠かしません。実際、結構な年数、専業主婦だった私より、全てにおいて上手なくらいです。
新築して5年後くらいに、リビングに匂いがし始めました。某大手の建築業者が建てた家で、換気設備がシッカリしており、結露や匂いがこもるようなことは一切ない優れた家なのです。ところが、そのころ、仕事から帰ると、リビングに妙な匂いがし始めたのです。
それがどうも、魚のような、奇妙な匂いなのです。いろいろ調べてみたのですが、台所は綺麗に掃除もできています。夫はお魚料理が好きで、毎日のように、お魚料理をして、さんまや他の魚類を焼くメニューも多かったのです。
調べていくと、どうも、調理の時に飛び散ったお魚の脂が、時間の経過とともに、変質して、嫌な匂いを出しているようなのです。どこから匂うのだろうと思うのですが、考えられるのは、ビルトインのオーブンレンジの中の、魚焼きオーブンしかありません。そこで、一度、その中をきれいに掃除し直すことにしました。夫に話したら、快く引き受けて、綺麗にしてくれました。ところが、それでも、その嫌な匂いがするのです、
リビングは広くて、法事の時に身内が集まったり、親しい知人・友人もここに入る場所です。臭くては困るのです。そして、その匂いは、今までにない嫌な匂いでした。
ビルトインのオーブンを掃除しても消えない匂いは、おそらく、お魚を焼くときの脂の焼けた煙が、壁などにも付着して、変質しているのだと想像しました。そこで、次の対策として、とにかく、窓を開けて風を通しました。幸い、庭があり、視界や音などの面では、窓を開けていても、さほど不便はありませんでした。
そして、一方で、夫と話をして、しばらく焼き魚は作らないことに決めました。焼き魚の好きな夫は、辛いようでしたが、調理済みの焼き魚のお総菜を買ってきて食べることで我慢してもらうことにしました。
しばらくそれを続けて、匂いがいくらかは改善されました。でも、窓を開けているときは、勿論、匂いは大分いいのですが、締め切るとやはりまだ匂いが残っています。冬場はまだましですが、夏場はやはり、モワーっと、匂いが立ち込めます。この時が一番嫌な臭いになります。
そして、臭いが消えない間にもお客は来ます。これが辛いところです。嫌な臭いなので、神経がとがります。シュッと部屋に噴く市販の匂い消しや香り付きの消臭剤などを試してみたのですが、噴くタイプは、しばらくしたら臭いにおいが勝つのです。置く型の消臭剤も、消臭剤がすぐに無くなるのに対して部屋が広く、いくつも部屋に置くので不経済です。また香り付きのものは、部屋でお客さんが食事する時に、その香りが合わないので不快なのです。
それでも、まだ匂いがするのが嫌で、ついには香水を使いました。お客さんが来られる前に、さっぱり感のある香りの好みの香水を絨毯などにふりかけて、長い香りの持続時間を期待したりしました。お客さんはこんなに香水の香りがする部屋をどう感じるだろうと思うと気が重かったのですが、臭い匂いよりはと、背に腹は代えられない気持ちでした。
ある時、薬局のバーゲンで、何気なく見つけた炭成分の消臭剤を買いました。置き方で、無臭と書いていました。色々なカラーやにおいのパターンがある中で、なんとなく、チャレンジ精神で始めて買ったのです。
そしてリビングに数個置いてみました。無臭と書いていますが、微妙に白檀かなにかのような香りがありました。御線香とまではいかないのでぎりぎり、「まあいいか」と思えるうっすらした香りです。
数日して、部屋の嫌なにおいをあまり感じないことに気が付きました。その消臭剤の微妙な白檀のような香りがするのです。「あれ?これはもしかしていけるかもしれない。」そう思いました。
しばらくして、お客さんが来ることになりました。又臭いで悩まねばなりません。新築してこんなに匂いで悩むとは思いませんでした。それでも、今度は、炭の消臭剤が効いているので、お客さんが来る前日から、消臭剤がたくさん蒸発できるように中の芯を引っ張り上げて、効かせました。有難いことに、それでお客さんが来られている間は臭いにおいがなんとかなりました。炭の威力は凄いものだと実感しました。これほど効くとは思っていませんでした。
その後、1年くらい過ぎるころには、部屋の匂いは気にならなくなりました。あの嫌な臭いは今も思い出すと嫌ですが、炭の成分のおかげで、また清潔なリビングになりました。そして今は、焼き魚は、回数を減らして電子レンジで調理するようにしました。これでやっと安心できました。